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世の中の独りの聖夜と独房の
         聖夜いずれが寂しかるらむ

 口笛でクリスマス・キャロルを奏ずれば 
           更に淋しき聖夜の獄舎
 ラジオよリジングルベルの流るる時 
           囚従ら殊に刑が身にしむ
 罪のなきホームレスらに較ぶれば
           囚徒らの聖夜豪華な聖夜
 今宵だけは一番上等の囚人服
         身に付け聖夜の夕食ヘ向いぬ

 人種、宗教、貧富、年齢を問わず、クリスマスの夜を一人きりで過ごすということは、非常に寂しいものだと思う。
 この世の中には一体どれだけの人々が、孤独な聖夜を迎えるのであろうか。夕食に招待してくれる者も、プレゼントを贈ってくれる友人も家族もいない娑婆の人々と、プリズンで服役中の者を比較してみることがよくある。果たしてどちらが哀れでさびしいのだろう。我々囚人たちには清潔で温かいシーツに毛布とベッドが与えられる。そしてローストチキンを主体にした立派な特別食を支給される。500人が同時に食事できる大食堂で4人1組のテープルに座り、気の合った仲間と楽しくクリスマスのディナーを頂くのである。我々の方が、ずっと恵まれているのではないか。ひとり暮らしの老人、留学中の学生、離婚した者、伴りよに先立たれた人……。
 いろいろな理由で独居生活を強いられている人々に比べれば、米国の刑務所内という大集団生活の一員である自分が孤独であるはずがない。
しかし、
 五千余の囚徒犇めく中に在り
      孤独であると言うは可笑しき
という心境である。
 別にパーティーに出かけるわけでもないのに、やはり特別の行事の日にはヒゲをそり、アイロンのビシッとかかったシャツとズボンを着たいのが人情だ。たとえそれが囚人服であり、独房とダイニングホールを往復するわずか20分ほどの食事時間のためだけではあるけれど……。
 特別の日と面会用に、一番上等の囚人服上下1着は大切に保管してある。ブルージーンズと青色のシャツである。
 クリスマスキャロルを口笛で吹いてみた。その華やかなメロディーとは裏腹に、メランコリーでセンチメンタルな気分になってしまった。
「メリー・クリスマス!」
2001年12月25日[朝日新聞掲載]

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