独房の小さき水槽(タンク)に芽生うる生グッピーの赤ちゃん復活祭(イースター)の朝に
静寂を破る猫らの格闘を煽り立てたり目覚めし囚徒
一九九九年二月
寒気刺す窓に佇み待ちおれば獄舎の屋根より初日の出ずる
雨降れば心も病むか冬の雨房に籠れば「鬱」が顔出す
獄中にいつか死ぬ為生きる我は「籠の鳥」(ケイジド・バード)
一九九九年一二月
獄中に矛盾する話ではあれどもっと時間が時間が欲しい
一九九九年九月
世の人の中にはつづれ纏うあり獄衣にアイロン掛けつつ想う
二〇〇〇年二月
限りなく殺風景な独房に林檎一個の華やかなる美
二〇〇〇年二月
新年の抱負は何かと問わるれば 出所し日本へ帰えりたしと告げん
一九九八年九月
獄窓に置きし餌に寄る野の鳥が「籠の鳥」なる我を眺むる
二〇〇〇年十二月
母恋し離れ離れの二十年「おふくろさん」を心で唱いぬ
一九九六年四月入選歌
銃殺の刑を選びし罪人の 処さるる朝の空は穏やか
一九九六年七月入選歌
ロープ無し縄跳びの技編み出して獄庭の隅にエクササイズす